スマホの誘惑 スマホは人間をダメにするのか

スマホを使う女性

 

ちょっと前になりますが、「BIG ISSUE」という雑誌に「スマホの誘惑」

という特集が載っていました。

 

「スマホの使い過ぎは子供の成長に悪影響がある」ということは、前々から言われていることで特に新しい情報ではないと思いますが、BIG ISSUEの特集では大きく3つに分けて書かれていました。

 

1 7万人の小中学生の追跡調査で成績低下が明らかに

長時間のスマホ使用は学習効果を打ち消す

いくら勉強しても、十分睡眠をとっても、関係なし! (榊 浩平)

 

榊氏は、仙台市立小中学校の児童・生徒を対象に行われた「学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト」の調査結果から、「自宅で勉強しようがするまいが、携帯・スマホを使う時間が長い生徒たちの偏差値が低い」ことが読み取れるとしています。

ここから導かれる仮設が「携帯・スマホの長時間使用が、脳の学習機能に何らかの異常をきたし、学習によって獲得した記憶を消し去っているかもしれない」というものでした。

 

このプロジェクトの調査の一つが「同じだけ勉強し、同じだけ睡眠を取っている子ども同士の、スマホの使用時間による偏差値の違い」を調べたもので、スマホ使用時間と学力の間には、顕著な相関関係があったそうです。(BIG ISSUEより)

 

成績上位層に入る割合が一番高かったは「スマホ使用時間が1時間未満」の子どもでした。

1時間未満の子が一番良かったということで、使用時間0の子よりいいんですね。

 

一方で、「スマホ使用時間が3時間以上」の子たちは、どれだけ睡眠を取っても、どれだけ勉強をしても、学力は平均に届かないことも分かったそう。

 

また、子どもたちが勉強時にも使っている上位のアプリは、ライン、動画、ゲーム、音楽なんだそうで、どのアプリを使っても学習効果に影響を与えるとのことです。

これら4つのうち、学習効果に一番影響が大きいのはラインと考えれるそうです。

ラインの通知は、単なるアラーム音と比べても集中力をそぐことが示されたとのこと。

 

このプロジェクトでは、子どもたち約1万4千任を匿名化して数年間調査を行いました。

その結果、分かってきたことは、

 

・スマホを使用しなかった子が2年後、”使用しないまま”、もしくは”1時間未満に増加”だと、偏差値は上がった。

 

・1時間以上使用の子が、”1時間未満に減少”、”使用しなくなった”場合は、偏差値は上がった。

 

・1時間以上使用の子が、”1時間以上を継続”だと、偏差値は下がった。

 

要するに、スマホを止めたり、使用時間を減らすと成績は上がる。(BIG ISSUE より)

 

これらの点を踏まえ、榊氏は、「スマホを自律的に活用できる子どもたちと、自己抑制ができずに依存してしまう子どもたちの間に、”脳格差”が拡大していくことは明らかだ」と述べています。

 

スマホを子どもたちが使っている今の現実について、榊氏は次のように訴えています。

「5~18歳の子どもたち223人を3年間追跡したところ、スマホなど、インターネット接続機器の使用頻度が高い子ほど、前頭前野を含む脳の極めて広範囲で発達の遅れが確認されました。

前頭前野の発達は20歳までが顕著で、神経線維は30歳までに向かって完成していきます。

ですので、できるなら20歳まではスマホを使わないというのが一番いい

せめて使用時間を自己管理する力ができてから」(BIG ISSUEより)

 

先日も、OECD加盟国の学力調査で、日本の子どもの読解力が低下しているという結果が出ました。

PISA調査 日本の15歳、読解力15位 3年前より大幅ダウン 科学・数学的応用力はトップレベル維持 – 産経ニュース

 

子どものスマホ使用について、大人(親)はもっと考えないといけないとは思います。

ですが、そういう大人が一日3~4時間スマホを使っている状況の中で、子どもに「スマホは使うな」と言えるのか。

また、学校自体、タブレット等、電子端末を使って勉強しているところも出てきているということなので、「学校でタブレットなどを使っているのに、家ではスマホを使うな」というのも、どうなんでしょうかね。

難しい問題かと思います。

 

 

2 急性内斜視、ネット依存、ゲーム障害……

「スマホに子守りをさせないで!」

小児科医が警鐘を鳴らす、子どもの発達とスマホ

 

都内の小児科で院長を務める内海裕美氏によると、近年、スマホの子育てアプリや動画を使って赤ちゃんをあやす、いわゆる「スマホによる子守り」が増えているそうです。

内海氏は、スマホ子守りの弊害を指摘して、子育てにスマホを使わないよう訴えています。

 

「乳児健診に来た親子があまりに静かなので待合室をのぞいたら、9か月の赤ちゃんと両親が無言でタブレットの画面を見ていました。

聞けば、いつもそんな感じだそうで、赤ちゃんには”バイバイをしない、積み木に手を出さない、大人の真似をしない”など、いくつもの気になるところがありました。

そこで、タブレットを見せないことや、赤ちゃんへの直接的なかかわり方をアドバイスしたところ、2週間後には気になるところは改善していました。」(BIG ISSUEより)

 

テレビやビデオと違い、スマホは生後8か月になれば、赤ちゃん一人でも操作ができ、現れた画面、動画を際限なく見ていられるそうです。(BIG ISSUEより)

 

2013年から『スマホに子守りをさせないで!』というポスターとリーフレットを新たに作り、スマホ漬けの育児に警鐘を鳴らしています。

小児眼科では今、幼児の急性内斜視が問題視されています。スマホで自分の視野より狭いものを見ると黒目が寄ってしまうからです。

これもスマホの影響か、小中高における裸眼視力1.0未満の子どもの割合は過去最悪です。(BIG ISSUEより)

 

スマホに頼った育児は、五感や言語の発達にも影響を及ぼすそうです。

 

子ども時代は土や草をいじったり、虫を捕まえたり、五感を通して脳が育ちます。

アメリカの研究によって、特に赤ちゃんのうちは”一方通行の言葉”はたとえ覚えたとしても使える言葉にはならないことが明らかになっています。

たとえば、暖かい日に散歩して『ぽかぽかしてるね』と声をかけられるのと、スマホの画面から視覚と聴覚だけで『ぽかぽか』という言葉を理解するのでは大違いで、後者は生きた知識にはなりません。(BIG ISSUEより)

 

赤ちゃんは、おなかがすいた、おむつが濡れた、暑い、寒い、抱っこしてほしいなどの欲求を、泣いたりぐずったりすることで訴えます。

その時、忙しくてかまってあげられない状況だとスマホを見せることも多いと思いますが、

内海氏は、このスマホを見せる行為が問題だと指摘します。

 

スマホの画面が現れれば、気をとられて泣き止みはしますが、欲求自体は満たされません。

親が右往左往しながらも手間暇かけて欲求を満たそうとすることで、子どもは愛されている実感を得るのだと思います。

3歳までの大事な時期に親子の愛情を築けなかった人は、のちに愛着障害※になり、他人との距離感がつかめず、苦しい思いをしたりします。(BIG ISSUEより)

※愛着障害…親などの特定の養育者との愛着形成がうまくいかないことで現れる困難の総称。

 

 

 

 

3 脳の機能低下をもたらす”スマホ脳過労”。

「ぼーっとしている時でも働いている

「デフォルトモード・ネットワーク」

 

これまではスマホの子どもの脳への影響を話題にしていましたが、ここではスマホの大人の脳への影響も指摘されています。

 

脳科学者の枝川義邦氏は、スマホとの上手な付き合い方を述べています。

 

夜、質の高い睡眠をとるための勝負は朝起きた時から始まっています。明るい環境に出て14~16時間後に、眠りを誘う『メラトニン』というホルモンが分泌され眠気を感じるのですが、夜になってもスマホの明るい光(ブルーライト)を目から取り込み続けるとメラトニンの分泌量が大幅に減り、寝つけなかったり、眠っても途中で目が覚めてしまうことになります。(BIG ISSUEより)

 

スマホの使い過ぎは、視覚、聴覚から大量の情報を脳に伝えます。

スマホからの大量の情報は、脳に高い負荷をかけるため、脳の記憶を司る仕組みの許容量を越えてしまうとのこと。

そうして、物覚えが悪くなったり、物忘れが多くなります。

なんでもスマホのネットで調べ、見たものを写真に撮って記録する、いわば”記憶の外部委託化”をしていると、脳がその状態に適応してメモリの容量を小さくしてしまう。

スマホ依存の状態にある人はワーキング・メモリ(脳内の記憶の仕組み)の容量自体が小さくなっていると考える研究者もいます。(BIG ISSUEより)

 

また、脳は日中、常に活動し続けているわけではなく、ぼーっとしている時間もあるのですが、このぼーっとしている時間は、人間にとって貴重な時間なんだそうです。

~(中略)~脳はそうやってぼーっとしている時に、ワーキングモードから『デフォルトモード・ネットワーク』が表出するモードへと切り替わっているんです。

このデフォルトモードは、脳が特に働いていないと感じる場面でも働いている脳内のネットワークですが、実は保存された情報の整理、編集もしています。

だからこそぼーっとした時に煮詰まっていた案件の打開策をひらめいたり、ど忘れしたことを思い出したりできるんです。(BIG ISSUEより)

ところが、スマホを暇つぶし、気晴らしのつもりでずーっと使っていると、このデフォルトモードは働かない、そのため、ひらめきも湧かない、ということだそう。

さらに、スマホは脳の血流にも変化を起こすことが分かってきたとのこと。

問題を解くなど、通常は脳の前頭前野の血流が上昇する場面であっても、スマホを使い過ぎている人の脳では、血流の上昇が見られなくなることがありますが、デジタル機器を手放す『デジタル・デトックス』により血流が上昇してくることがわかりました。(BIG ISSUEより)

前頭前野とは、脳のどんな役割を果たしているところなのか。

前頭前野はヒトをヒトたらしめ,思考や創造性を担う脳の最高中枢であると考えられている。

前頭前野は系統発生的にヒトで最もよく発達した脳部位であるとともに,個体発生的には最も遅く成熟する脳部位である。

一方老化に伴って最も早く機能低下が起こる部位の一つでもある。この脳部位はワーキングメモリー、反応抑制、行動の切り替え、プラニング、推論などの認知・実行機能を担っている。

また、高次な情動・動機づけ機能とそれに基づく意思決定過程も担っている。さらに社会的行動、葛藤の解決や報酬に基づく選択など、多様な機能に関係している。(前頭前野-脳科学辞典より)

この前頭前野の機能が低下すると、イライラしたり、怒りっぽくなったりするそうです。

デジタル・デトックス、一日のうち、どこかでスマホやPCを全く触らない時間を作ることが、

脳の良好な働きを維持するうえで大事なんですね。

 

枝川氏がお勧めしているのは、昼休みにスマホを置いて短い昼寝をする”パワーナップ”。

昼寝の直前にコーヒーを飲んで15~20分昼寝をすると、寝ている間にカフェインが吸収され、起きる頃にだんだんと効いてきて脳の働きが高まることを期待して”コーヒーナップ”という方法もあります。(BIG ISSUEより)

 

スマホで受けたダメージを回復するには、やはり夜の睡眠が大切なんだそう。

 

夕食後は部屋を薄暗くして、スマホはブルーライトをカットする設定にし、寝る一時間前にはスマホを完全に手放しましょう。

~(中略)~通信をオフにする機内モードにしていても、目覚ましや音楽の機能は問題なく使えます。

これほど便利な道具はありませんが、スマホに”使われる”のではなく、能動的に自分のタイミングで”使う”姿勢を忘れないでほしいですね。(BIG ISSUEより)

スマホに使われるな、スマホに支配されるな、スマホを”使う”のは自分なんだ。

これを忘れないようにしたいですね。

 

 

【追記12月19日】

先週のTBSラジオ「ジェーンスーの生活は踊る」の中で、このスマホと子どもの付き合い方についての話をしていました。

この中で、スーさんが「この話は、私たち世代が子どもの頃、テレビの見過ぎは子どもに良くない、と言われていたのと似ている」というようなニュアンスで話されていました。

僕も、「テレビの視聴時間と子どもの学力に相関関係がある」といった記事を何十年か前に読んだか聞いたかした覚えがあります。

 

今の時代、「テレビを見ると学力が落ちる」という話はあまりされていないような感じがしますね。

 

意味がちょっと違うかとは思いますが、10年以上前だったか、「携帯電話の電磁波が脳に悪い影響を与える」というのがありました。

当時、僕の知人は「PHSの方が電磁波が少なくて体に影響が少ないから、PHSを使っている』と言っていたのを覚えています。

今はPHSを使っている人はほとんどいないでしょうし、携帯電話の電磁波の話もあまり聞きません。

それとこの番組で触れられていたのは、「急性内斜視」の問題です。

ネットで検査すると、いろいろ出てきます。

スマホで若者の「斜視」増加か…適正な距離と使用時間はどれくらい? – FNN.jpプライムオンライン

スマホの使い過ぎ、特に近距離(20センチぐらい)での見過ぎは、急性内斜視を発症するリスクが高まるようです。

 

生活に便利で、なくてはならない必需品になると、リスクはあるかもしれないが、それといかに上手に付き合っていくか、ということが重要になってきて、「リスクがあるから使わない。」というのは、なかなか難しいことだと思いました。

BIG ISSUEで書かれていようにスマホを手放すというのは、今の時代、なかなか難しいとは思います。

自己コントロール、子どもも大人もこれが大事ですね。

 

スマホを操作する男性

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